涙とともにパンを食べたものでなければ、人生の味はわからない
── ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』
Wer nie sein Brot mit Tränen aß, wer nie die kummervollen Nächte auf seinem Bette weinend saß, der kennt euch nicht, ihr himmlischen Mächte.
人物
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749–1832)。ドイツの詩人・小説家・劇作家。 25 歳で書いた『若きウェルテルの悩み』で名を知られ、晩年まで手を入れ続けた『ファウスト』が代表作。 ヴァイマル公国では政務にも就き、色彩論など自然科学の研究も残した。文学だけの人ではなく、行政も科学もやった実務家の詩人。
出典
『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』(1795–96 年)第 2 巻第 13 章。 主人公ヴィルヘルムが、旅先で出会った年老いた竪琴弾きの部屋を訪ねる場面で、老人が竪琴に合わせて歌う 2 連の歌の前半にあたる。
この日本語は、原文の 4 行を一文に縮めた意訳として広く流布している形。原文の 4 行目は「人生の味はわからない」ではなく「天の力を知らない」と歌っている(後述の直訳を参照)。
この歌はシューベルトが 1816 年に歌曲にしている(「竪琴弾きの歌」D 480。作品 12 の第 2 曲として 1822 年に出版)。
原文
Wer nie sein Brot mit Tränen aß,
Wer nie die kummervollen Nächte
Auf seinem Bette weinend saß,
Der kennt euch nicht, ihr himmlischen Mächte.Ihr führt ins Leben uns hinein,
Ihr laßt den Armen schuldig werden,
Dann überlaßt ihr ihn der Pein;
Denn alle Schuld rächt sich auf Erden.
直訳。 涙とともにパンを食べたことのない者、悲しみに満ちた幾夜を寝床で泣きながら過ごしたことのない者、その者はあなたがたを知らない、天の力よ。 あなたがたは私たちを生の中へ導き入れ、哀れな者に罪を負わせ、そして苦しみに委ねる。地上ではすべての罪が報いを受けるのだから。
語句の和訳
| 原語 | 和訳 | メモ |
|---|---|---|
| wer nie … | 一度も…したことのない者は | wer は「…する者」を表す関係代名詞。nie は「一度も…ない」 |
| sein Brot … aß | 自分のパンを食べた | aß は essen(食べる)の過去形 |
| mit Tränen | 涙とともに | Träne(涙)の複数形 |
| die kummervollen Nächte | 悲しみに満ちた夜々 | Kummer(悲しみ・心労)+ voll(満ちた) |
| auf seinem Bette weinend saß | 寝床の上で泣きながら座っていた | Bette は Bett(寝床)の古い形。saß は sitzen(座る)の過去形 |
| der kennt euch nicht | その者はあなたがたを知らない | der はここでは「その者は」と受け直す指示代名詞 |
| ihr himmlischen Mächte | 天の力よ | 呼びかけ。Macht(力)の複数形 |
| ins Leben hinein führen | 生の中へ導き入れる | 第 2 連 |
| schuldig werden | 罪を負う | 第 2 連 |
| der Pein überlassen | 苦しみに委ねる | Pein は「苦痛・責め苦」 |
| alle Schuld rächt sich auf Erden | すべての罪は地上で報いを受ける | sich rächen は「復讐する/報いる」 |
感じたこと
(あとで書く)