弱者は決して許すことができない。許しは強者の態度である── ガンディー

間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない

── ガンディー

Freedom is not worth having if it does not connote freedom to err and even to sin.

人物

モーハンダース・カラムチャンド・ガンディー(1869–1948)。インドの弁護士・独立運動指導者。 彼が掲げた目標はスワラージ(swaraj)で、「自分で自分を治めること」を意味する。 外国の統治を追い出すことだけでなく、統治の失敗も自分たちで引き受けることを含む言葉として使った。 スワラージの考えを最初にまとめたのは『インド自治(Hind Swaraj)』(1909 年)で、自伝『真理を実験した私の物語』(1927–29 年)とともに主著とされる。 1930 年からの塩の行進と不服従運動のあと、1931 年 3 月に総督アーウィンと協定を結び、運動をいったん止めて円卓会議に出る道を選んでいる。 この協定という選択は、運動の内部からも強く批判された。

出典

1931 年 3 月 5 日、デリーで出した記者団向けの声明。 同じ日に成立したガンディー=アーウィン協定を受けて、これから何をするかを述べた長い文章である。 週刊紙『ヤング・インディア』1931 年 3 月 12 日号に掲載された(『ガンディー全集』第 45 巻 253 ページ。1971 年刊の版による)。 全集の該当ページで原文を確認した。

置かれているのはイギリス人に向けた呼びかけの箇所である。 ロンドンの円卓会議でイギリス側が譲った内容は半分にも足りない、本当に助けるつもりなら自分たちが命がけで守る自由と同じものをインドにも味わわせなければならない、とガンディーは書く。 そして「イギリスの政治家は、インドが誤りを通って森へさまよい込むのを、あえて許さなければならない」と述べた直後に、この一文が来る。 続きはこうである。 「全能の神がその最も卑しい被造物にさえ誤る自由を与えているのに、人間が、どれほど経験と能力があろうと、他の人間からその貴重な権利を奪って喜べるとは、私には理解できない」。

日本語訳には二つのずれがある。 一つは、原文の動詞が connote(含意する)であって include(含む)ではないこと。日本語の「含まれていない」は include 寄りの訳になっている。 もう一つは、原文が "freedom to err and even to sin"(誤る自由、さらには罪を犯す自由)と二段構えになっていて、後半が日本語から落ちていること。

この言い回しはガンディーが繰り返し使ったものである。 1917 年 11 月 3 日、ゴードラーでのグジャラート政治会議の議長演説では「誤る権利を持たない者は決して前へ進めない。誤る自由と誤りを正す力、これがスワラージの一つの定義である」と述べている(同全集 第 14 巻 54 ページ。1965 年刊の版による)。 1921 年から 1922 年の記事にも「独立は必然的に誤る自由を意味する」という一文がある(同 第 22 巻。1966 年刊の版による。全集は巻ごとに刊行年が違い、ページ番号も版によって変わる)。

原文

Freedom is not worth having if it does not connote freedom to err and even to sin.

直訳。 自由は、誤る自由を、さらには罪を犯す自由までを含意しないのであれば、持つに値しない。

語句の和訳

原語 和訳 メモ
freedom 自由 ガンディーはこれをスワラージ(自治)と重ねて使う
is not worth having 持つに値しない be worth ~ing で「…する価値がある」
connote 含意する 「言葉の意味としてそれを伴う」。include(中に含む)より意味が狭い
freedom to err 誤る自由 err は「間違える・道を外れる」の硬い語
and even to sin さらには罪を犯す自由まで sin は道徳・宗教上の罪。err より重い
the humblest of His creatures その最も卑しい被造物 続きの文。creature は神が造ったもの
it passes my comprehension how … どうして…なのか私には理解できない pass one's comprehension で「理解を超える」
that precious right その貴重な権利 誤る自由を「権利」と言い直している
swaraj スワラージ 「自分で自分を治めること」。1917 年の演説での言い換え
the right to err 誤る権利 1917 年の演説の語。1931 年の freedom と対応する