幸福とは、考えること、言うこと、することが調和している状態である
── ガンディー
人物
モーハンダース・カラムチャンド・ガンディー(1869–1948)。インドの弁護士・独立運動指導者。 書く量が非常に多かった人でもある。 『インディアン・オピニオン』『ヤング・インディア』『ナヴァジーヴァン』『ハリジャン』と、生涯にいくつもの週刊紙を自分で編集し、そこに毎週記事を書いた。 単行の著作は『インド自治(Hind Swaraj)』(1909 年)と、週刊紙に連載した自伝『真理を実験した私の物語』(1927–29 年)が知られる。 手紙・演説・記事まで集めた『ガンディー全集』は全 98 巻におよぶ。 そのため、彼の言葉とされる文が本当に彼のものかどうかは、原則としてこの全集にあたれば確かめられる。
出典
この文がガンディーの著作・演説のどこにあるかは確認できなかった。
『ガンディー全集』全 98 巻の英語テキストを機械検索した。 "Happiness is when" という言い回しは 1 か所もなく、happiness(幸福)と harmony(調和)が近くに現れる箇所も見つからない。 検索したのは光学文字認識で起こしたテキストなので、読み取り誤りの可能性は残る。「全集に存在しない」と断定はできない。 ただし、この文をガンディーの言葉として載せている英語圏の引用サイトはどこも典拠を示していない。 Goodreads はこの文を「attributed-no-source(出典の示されていない帰属)」に分類している。 帰属は未確認である。
近い趣旨の文なら全集にある。 1926 年 4 月 20 日、アフマダーバードのサティヤーグラハ・アーシュラムの朝の祈りで行った『バガヴァッド・ギーター』講話に、「行いと言葉と思いが互いに調和している人が、理想の人である」という一節がある(『ガンディー全集』第 32 巻 169 ページ。1969 年刊の版による)。 ただしこれは幸福について述べたものではなく、他人が手本にする理想の人について述べたものである。 この講話が流布している英文の元になったという裏付けはない。
なお、思い・言葉・行いの三つを並べる言い方そのものは、サンスクリットの定型句 manasā vācā karmaṇā(思いにおいて、言葉において、行いにおいて)として知られている。 この英文がそこから来たという説明を見かけるが、根拠を示したものは見つからなかった(未確認)。
原文
原文は特定できなかった。英語で流布している形は次のとおり。
Happiness is when what you think, what you say, and what you do are in harmony.
これはガンディーの言葉として英語圏で広まっている文であり、一次資料で確認された原文ではない。 日本語はこの英文をほぼそのまま訳したものである。
語句の和訳
以下は流布している英文についての説明で、確認された原文の語釈ではない。
| 原語 | 和訳 | メモ |
|---|---|---|
| happiness is when … | 幸福とは…であるときだ | 名詞を when 節で受ける口語寄りの言い方。定義文としては緩い |
| what you think | あなたが考えること | 関係代名詞 what。以下二つと並列 |
| what you say | あなたが言うこと | 同上 |
| what you do | あなたがすること | 同上。思い・言葉・行いの三つ組 |
| are in harmony | 調和している | be in harmony で「互いに食い違わない」 |
| actions, speech and thought | 行い・言葉・思い | 全集にある近い一節(1926 年の講話)での語順 |
| the ideal man | 理想の人 | 同じ一節の主語。happiness ではない |
| manasā vācā karmaṇā | 思いにおいて、言葉において、行いにおいて | 三つを並べるサンスクリットの定型句 |
| attributed-no-source | 出典の示されていない帰属 | Goodreads がこの文に付けている分類 |