なぜいつも遠くへばかり行こうとするのか?見よ、よきものは身近にあるのを。ただ幸福のつかみ方を学べばよいのだ。幸福はいつも目の前にあるのだ
── ゲーテ
Willst du immer weiter schweifen? Sieh, das Gute liegt so nah.
人物
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749–1832)。ドイツの詩人・小説家・劇作家。 『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』で知られるが、生涯を通して短い抒情詩を書き続けた人でもある。 自作を編み直すことにも執着し、晩年の 1827 年から刊行が始まった『決定版全集(Ausgabe letzter Hand)』では、詩を「歌(Lieder)」「バラード」「格言的」といった部立てに並べ替えている。 ヴァイマル公国の政務にも就き、色彩論など自然科学の研究も残した。
出典
『決定版全集』(1827 年、コッタ書店、シュトゥットガルトおよびテュービンゲン)第 1 巻 67 ページ、「歌」の部に「Erinnerung(想い出)」の題で置かれた 4 行の詩。 強弱の 4 拍で刻む 4 行で、1・3 行目が 8 音節、2・4 行目が 7 音節。脚韻は schweifen–ergreifen、nah–da と交差する。
成立年は 1789 年とされることが多いが、これは歌曲データベース LiederNet Archive などの書誌による記載で、一次資料では確認できなかった。 活字で確認できるのは 1827 年の『決定版全集』である。 この 4 行にはライヒャルト、シュポーア、フルトヴェングラーらが曲を付けている(同じく LiederNet Archive の作曲一覧による。楽譜そのものは未確認)。
日本語は 4 行を 1 文ずつに対応させた訳で、意訳の度合いは小さい。 ただし 4 行目「幸福はいつも目の前にあるのだ」の原文は "denn das Glück ist immer da"(幸福はいつもそこにある)で、「目の前」にあたる語はない。
原文
Willst du immer weiter schweifen?
Sieh, das Gute liegt so nah.
Lerne nur das Glück ergreifen,
Denn das Glück ist immer da.
直訳。 おまえはいつまでもさらに遠くへさまよい出ようとするのか。見よ、よきものはこんなに近くにある。 ただ幸福をつかむことを学べ。幸福はいつもそこにあるのだから。
語句の和訳
| 原語 | 和訳 | メモ |
|---|---|---|
| willst du …? | おまえは…しようとするのか | wollen(欲する)の 2 人称単数。親しい相手への呼びかけ |
| immer weiter | いつまでもさらに先へ | immer(いつも)+ weiter(より遠くへ) |
| schweifen | さまよい出る | あてもなく遠くへ歩き回ること。ausschweifen(逸脱する)と同じ語 |
| sieh | 見よ | sehen(見る)の命令形 |
| das Gute | よきもの | 形容詞 gut を名詞化した中性名詞 |
| liegt so nah | こんなに近くにある | liegen は「横たわる・位置する」。nah は「近い」 |
| lerne nur | ただ…することを学べ | lernen の命令形。nur は「…しさえすればよい」 |
| das Glück ergreifen | 幸福をつかむ | greifen(つかむ)に er- が付いて「つかみ取る」の意 |
| denn | なぜなら | 理由を述べる接続詞 |
| ist immer da | いつもそこにある | da は「そこに」。場所を特定しない語で、「目の前」までは言っていない |