世間というものはとどのつまり肝心なことは何一つ答えたりしない。個人でさえそうなのだ。大人は質問に答えたりしない、それが基本だ
── 利根川幸雄『カイジ』
人物
利根川幸雄。『賭博黙示録カイジ』に登場する帝愛グループの最高幹部の一人。 この演説の場面が原作での初登場にあたり、ギャンブル船エスポワール号で主催側の説明役として演壇に立つ。勤勉で人心掌握に長け、大勢の黒服を束ねる一方、会長 兵藤和尊の意を読み損ねて逆鱗に触れることがある。のちにカイジと E カードで対決して敗れ、制裁を受ける。
作者は福本伸行(1958 年生)。『週刊ヤングマガジン』で 1996 年 11 号から 1999 年 36 号まで連載され、全 13 巻・全 158 話。
出典
単行本 1 巻。第 1 章「希望の船」、エスポワール号での限定ジャンケンのルール説明の直後。
エスポワール(フランス語で「希望」)号は、借金を抱えた多重債務者を集めたギャンブル船。参加者は年利四割増しの条件で金を借り、グー・チョキ・パー各 4 枚のカードと星 3 個を持って限定ジャンケンに臨む。 利根川がルールを説明し終えると、債務者たちが口々に質問を浴びせる。それに対して放たれたのがこの演説で、相手はカイジ個人ではなく船上の全員。演説はこのあと甘えを捨てろという話に進み、「勝つことが全てだ……勝たなきゃゴミ……」へと続く。
1 巻であることは、あらすじ記事・名言をまとめたサイト・話数一覧の三つが一致する。話数は確認できなかった。1 巻に収められた第 6 話「変貌」とする記述はあるが一件のみで、未確認。
字面について。「とんでもない誤解だ」から「こんな船にいるんだ」までは、著者が原作の該当コマの画像で確認したもの(2026-09-13)。frontmatter の text はそのうち「世間というものは」から「それが基本だ」までを採り、全文は note に置いた。読点は補ったもので、原作は吹き出しの改行だけで区切る。さらに前に「バカがっ……!」を置く形も流布しているが、その部分は画像の範囲外で未確認。
原文
原作のコマの字面。行は吹き出しの区切り、空行はコマの区切り。
とんでもない誤解だ
世間というものはとどのつまり
肝心なことは何一つ答えたりしない個人でさえそうなのだ
大人は質問に答えたりしない
それが基本だおまえたちはその基本をはきちがえているから
今朽ち果ててこんな船にいるんだ
原作は句読点を打たず、吹き出しの改行で区切る。上は吹き出し内の改行を詰めてある。
文脈。利根川は二段に分けて言う。まず、世間は肝心なことを答えないという事実。次に、それを知らずに質問した側の落ち度。答えが返ってくると思っているのが甘えであり、その甘えのまま来たから今この船にいる、という筋になっている。質問を突っぱねているのではなく、質問したこと自体を負けの証拠として使っている。
語句の説明
慣用句だけ説明する。
| 語句 | 意味 | メモ |
|---|---|---|
| とどのつまり | いきつくところ。結局 | 『デジタル大辞泉』は「多く、思わしくない結果である場合に用いる」と注記する。ボラが成長の最後に「トド」と呼ばれることに由来するという説がある |
| はきちがえる | 意味を取り違える。考え違いをする | 本来は履物を間違えて履くこと。『デジタル大辞泉』の第二義がこの用法 |
| 朽ち果てる | 世に知られないままに死んでしまう | 第一義は「すっかり腐って形をなくす」。ここは第二義寄りで、落ちぶれたままという含み |