弱者は決して許すことができない。許しは強者の態度である── ガンディー

金っ……!金はな……金は命より重い……!

── 利根川幸雄『カイジ』

人物

利根川幸雄。『賭博黙示録カイジ』に登場する帝愛グループの最高幹部の一人。 大勢の黒服を束ね、同じ幹部の黒崎と序列を争う。勤勉で人心掌握に長ける一方、会長 兵藤和尊の意を読み損ねて逆鱗に触れることがある。ギャンブル船エスポワール号で主催側の説明役として初めて姿を見せ、のちにカイジと E カードで対決して敗れる。

作者は福本伸行(1958 年生)。『週刊ヤングマガジン』で 1996 年 11 号から 1999 年 36 号まで連載され、全 13 巻・全 158 話。1998 年に第 22 回講談社漫画賞を受けている。

出典

単行本 6 巻(1997 年 12 月刊)。第 2 章「絶望の城」、鉄骨渡りに入る直前の演説。

まず場面の訂正から。この言葉はエスポワール号での演説として紹介されることがあるが、確認できた範囲ではそうではない。 エスポワール編の後、カイジは再び借金を負い、帝愛グループの「人間競馬 Brave men road」に参加する。地上に組んだ低い鉄骨を渡る競走で、勝ち残った者に賞金が示される。ところがそれを現金化するには、高層ビルの間に架けた鉄骨を制限時間内に渡らなければならないと告げられる。憤る債務者たちに向けて利根川が放つのが、この演説にあたる。相手はカイジ個人ではなく、その場の債務者全員。

6 巻であることは、性質の異なる三系統の資料(英語版 Wikipedia の話数一覧、あらすじ記事、名言をまとめたサイト)が一致する。話数を第 70 話「拍車」とする記述もあるが一件のみで、未確認。第 70 話は 6 巻の最終話にあたり、「6 巻の終盤」というあらすじの記述とは矛盾しない。

字面について。原作のコマを載せた資料には当たれず、正確な字面は確認できなかった。「……」の点の数、改行位置、「っ」の有無は資料ごとに違う。

原文

原典は単行本のコマで、本文を載せた一次資料に当たれなかった。流通している形は次のとおり。

勘違いするなっ……! ガキめらっ……!
金っ……! 金はな……命より重いんだっ……!

世間の大人どもが本当のことを言わないなら オレが言ってやるっ……!
金は命より重い……!

二つは同じ演説の別の箇所で、どちらも「金は命より重い」に落ちる。掲げた「金っ……!金はな……金は命より重い……!」は、一つ目の前半と二つ目の後半をつないだ短縮形にあたる。

文脈。利根川は「金は命より重い」を、脅し文句としてではなく、世間が口にしない事実の開示として言っている。命より重いのだから、金を得るには命を張る以外にない。この一言が、そのまま鉄骨渡りへ参加させるための理屈になっている。