弱者は決して許すことができない。許しは強者の態度である── ガンディー
ネットワーク

ポリシングは捨て、シェーピングは待たせる

混んだときだけ効く 5 つの処理(分類・マーキング・ポリシング・キューイング・シェーピング)を 1 枚で見る。捨てるのはどれで、待たせるのはどれか

ぴぐおv1人の校閲なし(AI のみ)訂正なし
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目次

本編の図では、通信は詰まらずに流れるものとして描いてきました。

混んだときに何が起きるかは、1 本の通信を追う形では出てきません。 同じ口に集まった他の通信との関係で決まる話なので、別枠の 1 枚にまとめます。

この連載は、ネットワークの言葉を 3 つの層に置いて読みます。 もの(物理か論理か)、結びつき(人が設定で付ける手動か、機器が学習する自動か、製造時に決まる固定か)、通信フロー(1 本の通信がそれらを順に通る道筋)の 3 つです。

QoS が効くのは、出口の速さより入ってくる量が多いときだけです。 Cisco の文書は、混んでいないときは届いたパケットがそのまま口から出ていくと書いています。

登場するもの

分類

どの通信かを決める処理です。 見るのは、送信元・宛先・ポート番号といった ACL と同じ材料か、すでに付いている印です。

マーキングと DSCP

決めた種類を、パケット自身に印として書く処理です。 印を書く欄は DS フィールドで、RFC 2474 が IPv4 の TOS オクテットと IPv6 の Traffic Class オクテットを置き換える形で定めています。 そのうち 6 ビットが DSCP で、パケットが各機器でどう扱われるかを選びます。

PHB

その印を見て、1 台ごとにどう扱うかの取り決めです。 RFC 2474 の定義では「外から見て分かる転送の扱い」を指します。

ポリシング

決めた速さを超えた分を捨てる処理です。 Cisco の文書は、捨てるのが普通だが印を付け替えることもある、と書いています。 入口の側で「約束以上は受け取らない」と決めるときに使います。

キューイングと輻輳回避

出口の待ち行列に、種類ごとに並べる処理です。 音声のように遅れに弱い通信は、優先の列に入れて先に出します。 列が溢れる前に印の低いものから落としておく動きが輻輳回避で、一度にまとめて落ちるのを避けます。

シェーピング

決めた速さを超えた分を、待たせて後から出す処理です。 出口の側で「契約した速さに合わせる」ときに使います。

別枠 D の図

図の左から右が入口から出口までの 5 つの処理で、右下がシェーピングの説明です。

別枠 D:QoS の工程。ルータの中で、通信が「入ってから出るまで」に受ける 5 つの処理 線が混んだとき(出口の速度より入ってくる量が多いとき)だけ意味を持つ。空いていれば何もしないのと同じ 入口 ① 分類 どの通信か決める (音声? 動画? 事務?) 見るもの:ACL(送信元・ 宛先・ポート番号)や既存の印 ② マーキング 決めた種類を印として パケットに書く (IP ヘッダの DSCP 欄) 次のルータはこの印だけ見る ③ ポリシング 決めた速さを超えた分を 捨てる(または印を下げる) 入口側で使う 「約束以上は受け取らない」 ④ キューイング 出口の待ち行列に 種類ごとに並べる 音声は優先の列 (混んでも先に出す) 混みすぎたら:輻輳回避 (列が溢れる前に、印の低いものから間引く) ⑤ シェーピ ング 出口 ⑤ シェーピング(出口側) 決めた速さを超えた分を、待たせて後で出す(捨てない) 出口側で使う。「契約した速さに合わせて均す」 ポリシングは捨てる、シェーピングは待たせる。ここが試験の定番 待たせるので遅延は増えるが、再送は減る なぜこの順か 印(②)は入口で 1 回付ければ、あとの機器は ① をやり直さなくてよい ③ は入口で「受け取る量」を決め、④⑤ は出口で「出す順と速さ」を決める 音声は「遅れると使えない」ので ④ で優先、事務のファイル転送は待てるので後回し 3 層で言えば全部「ルータの中の手順」。通信フローの ②(テーブルを探す)の後ろに挟まる 用語:DSCP=IP ヘッダの 6 ビットの印。PHB(per-hop behavior)=「各ルータがその印を見てどう扱うか」の取り決め。試験で問われるのは工程の名前と役割で、設定コマンドではない

捨てるのか、待たせるのか

ポリシングとシェーピングは、どちらも「決めた速さを超えた分」を相手にします。 出典にした Cisco の文書は、両者の違いをデータ用の待ち行列を持つかどうかに置き、待ち行列を持たなければポリシングになると書いています。

待たせる側は、その分だけ遅れが増えます。 捨てる側は遅れませんが、捨てられた分は届きません。

本編との接続

ネットワーク_09_ACL(/notes/nw-basics-09-acl)で見た「送信元・宛先・ポート番号の組で通信を選ぶ」という見方は、ここでは通す・通さないではなく、どの種類かを決めるために使われます。

ネットワーク_11_IPsec(/notes/nw-basics-11-ipsec)のように外側のヘッダで包んだ通信では、途中の機器が見られるのは外側の印だけです。

CCNA では、分類・マーキング・キューイング・輻輳・ポリシング・シェーピングが 4.7 に並んでいます。 問われるのは各機器の扱い(PHB)の説明で、設定ではありません。

未検証・注意

  • 図にある「待たせるので遅延は増えるが、再送は減る」の後半は、出典で確認できませんでした。確認できたのは、シェーピングが超過分を待ち行列で遅らせることと、ポリシングが捨てるか印を付け替えることまでです。
  • 図は、この 5 つを本編の通信フローの「テーブルで一致する行を探す」の後ろに置いています。実際の機器では、入口での分類は経路を探す前に行われることがあります。図の並びは 5 つの処理の前後関係を示したもので、経路の探索との前後を確かめたものではありません。
  • 輻輳回避が印のどれを先に落とすかは、機器の設定によります。出典の文書は IP precedence または DSCP の値で落とす確率を変えると書いています。
  • 音声を優先の列に入れる動きは、Cisco の文書では低遅延キューイング(LLQ)として説明されています。図はその名前を出さず、動きだけを書いています。
  • 図と本文は、種類の決め方と印の付け方までを扱います。どの通信にどの値を割り当てるかは、この記事の範囲外です。

出典

  • 勉強会での本人の観察(2026-09-13 実機ハンズオン。資料は非公開)
  • Cisco: Policing and Shaping Overview — 「A policer typically drops traffic, but it can also change the setting or 'marking' of a packet.」「A shaper typically delays excess traffic using a buffer, or queueing mechanism, to hold packets and shape the flow when the data rate of the source is higher than expected.」「if it did not have a data buffer, it would be a policer」
  • Cisco: Congestion Management Overview — 「During periods with light traffic, that is, when no congestion exists, packets are sent out the interface as soon as they arrive.」「Strict PQ allows delay-sensitive data such as voice to be dequeued and sent before packets in other queues are dequeued.」
  • Cisco: Congestion Avoidance Overview — 「By dropping some packets early rather than waiting until the queue is full, WRED avoids dropping large numbers of packets at once」「Packets with a higher IP precedence are less likely to be dropped than packets with a lower precedence.」
  • RFC 2474: Definition of the Differentiated Services Field (DS Field) — 「A replacement header field, called the DS field, is defined, which is intended to supersede the existing definitions of the IPv4 TOS octet and the IPv6 Traffic Class octet.」「Six bits of the DS field are used as a codepoint (DSCP) to select the PHB a packet experiences at each node.」PHB は「A description of the externally observable forwarding treatment applied at a differentiated services-compliant node to a behavior aggregate.」
  • Cisco: CCNA 200-301 v1.1 Exam Topics — 「4.7 Explain the forwarding per-hop behavior (PHB) for QoS such as classification, marking, queuing, congestion, policing, and shaping」

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この記事の校閲記録

誰が・いつ・どの版の・どの段落を・何の観点で見て、何と言ったかを全件そのまま出す(追記のみ・削除しない)。

段落 33 のうち出典つき 15・出典なし 18

v1 1 件
  • AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決

    ポリシングが超過分を捨てるか印を付け替えること(A policer typically drops traffic, but it can also change the setting or 'marking' of a packet)とシェーピングが待ち行列で遅らせること(A shaper typically delays excess traffic using a buffer, or queueing mechanism)、両者の違いがデータ用の待ち行列の有無であることは Cisco の Policing and Shaping Overview で確認した。混んでいないときは届いた順に出ていくこと(During periods with light traffic ... packets are sent out the interface as soon as they arrive)と、音声のように遅延に弱い通信を先に出す優先の列は Congestion Management Overview、列が溢れる前に印の低いものから落とす動きは Congestion Avoidance Overview で確認した。DSCP が DS フィールドの 6 ビットで、DS フィールドが IPv4 の TOS オクテットと IPv6 の Traffic Class オクテットを置き換えること、PHB の定義は RFC 2474 で確認した。分類・マーキング・キューイング・輻輳・ポリシング・シェーピングが CCNA 4.7 の項目であることは Cisco の試験範囲 PDF から抽出して確認した。図にある『再送は減る』と、この 5 つが通信フローのどこに挟まるかという位置づけは確認できず未検証として本文に書いた。校正チェックリスト(英訳しての通読・結論の先取り・藁人形・未定義語の初出・比喩・体言止めの混入・表記揺れ)を通した。守秘: 実名・社名・会場名・地名・金額なし

参考文献

更新履歴

  • 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
  • 公開: 連載「ネットワーク基礎」別枠 A〜D(ケーブルと物理ポート・構成の型・IOS のモード地図・QoS の工程)

機械可読の記録