弱者は決して許すことができない。許しは強者の態度である── ガンディー
ネットワーク

予備の経路を、普段は眠らせておく

同じ宛先の行を 2 つ書いて、AD 値(行の信用度)だけを変えると、予備の経路は普段テーブルに載らず、主の線が切れたときだけ現れる。その仕組みを 1 枚の図で見る

ぴぐおv1人の校閲なし(AI のみ)訂正なし
ネットワークルーティングスタティックルートconcept
目次

勉強会のおまけのクイズに「フローティングスタティックルート」という語が出てきました。

説明はなく、言葉だけが置かれていました。 同じラボで、同じ手書きの経路なのに、Cisco のルータの表示は [1/0]、Fortigate の表示は [10/0] と、左の数字が違っていたのも引っかかっていました。 どちらも、ルーティングテーブルの行に付く 1 つの数字の話でした。

この連載は、ネットワークの言葉を 3 つの層に置いて読みます。 もの(物理か論理か)、結びつき(人が設定で付ける手動か、機器が学習する自動か、製造時に決まる固定か)、通信フロー(1 本の通信がそれらを順に通る道筋)の 3 つです。

登場するもの

AD 値

論理のものです。 ルーティングテーブルの行 1 本ずつに付く信用度で、小さいほど信用されます。 Cisco の既定値は、直結のネットワークが 0、手で書いたスタティックが 1、OSPF が 110 です。 同じ宛先の行が複数あるとき、AD 値がいちばん小さい行だけがテーブルに載ります。

主の線と予備の線

物理のものです。 図では、ルータ 1 とルータ 2 の間にもう 1 本ケーブルを足し、172.16.12.0/30 を主、172.16.13.0/30 を予備としています。

結びつき

  • 行 ⇄ AD 値は手動です。経路を書くコマンドの最後に数字を足すと、その行だけ信用度を変えられます。
  • 行 ⇄ 出口インターフェースの状態は自動です。出口が down になると、その行はテーブルから消えます。消えた結果、次に信用される行が載ります。
  • この 2 つが組み合わさるので、人は 2 行書くだけでよく、切り替えの判断は機器がやります。

通信フロー

この図には新しい通信フローがありません。 図 5 の ②「テーブルで一致する行を探す」の探し方そのものは変わらないからです。 変わるのは、探す前に「どの行が載っているか」で、それが線の状態で入れ替わります。

平常時は、AD 1 の主の行だけが載っています。 予備の行は書いてあってもテーブルには現れず、眠っています。

主の線が切れると、出口インターフェースが down になり、主の行が消えます。 同じ宛先の行はもう 1 本しかないので、AD 10 の予備の行が現れます。

主の線が戻れば、AD の小さい主の行が再び載ります。

補 1 の図

図の上半分が構成図とルータ 1 に書いた 2 行、下半分が平常時と障害後のテーブルの推移です。

フローティングスタティック:予備の経路を、普段は眠らせておく 図 5 のルータ 1・2 の間に、もう 1 本(予備)の線を足す。同じ宛先の行を 2 つ書くが、信用度(AD 値)を変える PC-A 192.168.10.10 ルータ 1 Gi1 172.16.12.1 /30 Gi2 172.16.13.1 /30 Gi1 Gi2 主の線 172.16.12.0/30 予備の線 172.16.13.0/30 ルータ 2 Gi0 172.16.12.2 /30 Gi2 172.16.13.2 /30 Gi1 192.168.3.1 Gi0 Gi2 Gi1 PC-C 192.168.3.10 ルータ 1 に書いた 2 行(設定) ip route 192.168.3.0/24 → 172.16.12.2    AD 1(既定・主) ip route 192.168.3.0/24 → 172.16.13.2 10  AD 10(手動で大きく・予備) 同じ宛先の行が複数あるときは、AD(行の信用度・小さいほど信用)が いちばん小さい行だけがルーティングテーブルに載る 平常時のテーブル S 192.168.3.0/24 [1/0] via 172.16.12.2 (予備の行は載っていない=眠っている) 主の線が切れた後 Gi1 が down → 主の行が消える S 192.168.3.0/24 [10/0] via 172.16.13.2 (予備の行が現れる) 主の線が戻れば、また主の行に戻る 3 層で見ると もの:AD 値(論理。行に付く信用度。Cisco のスタティックは既定 1、直結は 0、OSPF は 110) 結びつき:行 ⇄ 出口インターフェースの状態(自動。出口が down になると、その行はテーブルから消える) フロー:図 5 の ②「一致する行を探す」の前に「どの行が載っているか」が線の状態で変わる。探し方そのものは同じ 勉強会の実機で Cisco の表示が [1/0]、Fortigate が [10/0] と違ったのは、この AD の既定値がメーカーで違うため。数字の意味は同じ「行の信用度」

図 5 との接続

図 5 では、同じ宛先の行は 1 本しか出てきませんでした。 だから「一致する行を探す」だけで出口が決まりました。

行が 2 本あるときの規則は 2 段になります。 宛先の範囲が違えば、狭い行が勝ちます(ロンゲストマッチ)。 宛先も範囲も同じなら、AD 値の小さい行が勝ちます。

勉強会で見た [1/0] と [10/0] の左の数字がこの AD 値です。 同じ「手で書いた経路」でも、Cisco の既定は 1、Fortigate の既定は 10 と違っていました。 数字の意味はどちらも同じで、行の信用度です。

未検証・注意

  • 「フローティングスタティックルート」という呼び名を Cisco の設定ガイドで引くと、定義は「動的ルーティングプロトコルで学習した経路の予備として使うスタティックルート」です。図が描いているのはスタティック同士の予備で、同じ AD の規則を当てはめた形です。動的ルーティングは後の記事で扱います。
  • Fortigate でスタティックの既定 AD が 10 だった、というのは勉強会の画面表示に基づきます。Fortigate の公式資料では確認していないので未検証です。
  • 「出口が down になると行が消える」は、経路を書くときに permanent を付けると変えられます。付けるとインターフェースの障害時も経路を削除しません。
  • 図は予備の線を直結のケーブルとして描いています。予備の経路がインターネット経由になる場合の話は、この図には含まれません。

出典

関連

この記事の校閲記録

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段落 28 のうち出典つき 12・出典なし 16

v1 1 件
  • AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決

    AD の既定値(直結 0・スタティック 1・OSPF 110)と「小さい値が優先される」を Cisco のドキュメントで確認した。フローティングスタティックの定義(動的経路の予備として、より大きい AD を設定する)を Cisco の設定ガイドで確認し、図が描くスタティック同士の予備は同じ規則の適用であることを本文に書き分けた。`ip route` に AD 値を書き足せること・permanent を付けるとインターフェース障害時も経路を消さないことをインフラエキスパートで確認した。Fortigate のスタティックの既定値 10 は勉強会での表示に基づくもので、Fortigate の公式資料では未確認。守秘: 実名・社名・会場名・地名・金額なし

参考文献

更新履歴

  • 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
  • 公開: 連載「ネットワーク基礎」の土台 11 本(入口・図 1〜7・補 1〜3)と目次

機械可読の記録