弱者は決して許すことができない。許しは強者の態度である── ガンディー
ネットワーク

ルータ 1 台の中に、ルーティングテーブルを複数持つ

同じ番地を使う 2 つの組織を 1 台のルータで混ぜずに扱う VRF を、インターフェースとテーブルの結びつきとして 1 枚の図で見る

ぴぐおv1人の校閲なし(AI のみ)訂正なし
ネットワークルーティングvrfconcept
目次

勉強会で Fortigate の経路表示を見たとき、先頭に「VRF=0」と出ていました。

何のことか説明はありませんでした。 ルータは自分のテーブルだけを見る、という動きを覚えたあとだったので、テーブルに番号が付いている理由が分かりませんでした。 この記事は、その番号の正体を 1 枚の図で見ます。

この連載は、ネットワークの言葉を 3 つの層に置いて読みます。 もの(物理か論理か)、結びつき(人が設定で付ける手動か、機器が学習する自動か、製造時に決まる固定か)、通信フロー(1 本の通信がそれらを順に通る道筋)の 3 つです。

登場するもの

VRF

論理のものです。 ルータの中に持つ、もう 1 つのルーティングテーブルです。 箱は 1 つのままで、テーブルだけが複数になります。 スイッチの中を設定で分ける VLAN と同じ発想を、ルータのテーブルでやります。

重なった番地

図では、A 社の PC と B 社の PC がどちらも 192.168.10.10 です。 テーブルが分かれているので、この 2 台は同じ番地のまま 1 台のルータにつながります。 テーブルが 1 つしかなければ、192.168.10.0/24 の行を 2 つ持てないので、どちらかを別の番地に振り直すことになります。

結びつき

  • インターフェース ⇄ VRF は手動です。物理ポートや論理インターフェースに「どの VRF に属するか」を設定します。
  • 1 つのインターフェースは、同時に 2 つの VRF に属せません。だから「この口に来た通信はこのテーブル」が一意に決まります。
  • VRF ごとのテーブルの行 ⇄ その VRF の口の IP は自動です。口に IP を付ければ、その VRF のテーブルに行が載ります。行が載る仕組みはテーブルが 1 つのときと同じで、載る先が分かれるだけです。

通信フロー

この図には番号付きの通信フローがありません。 通信の通り道そのものは変わらず、変わるのは探すテーブルだからです。

ルータの動きは「自分のテーブルだけを見る」でした。 VRF を分けると、これが「自分の VRF のテーブルだけを見る」になります。 青の口に来た通信は青のテーブルだけを見て、橙のテーブルは見えません。

図 5 の ②「テーブルで一致する行を探す」が、この 1 段を挟んだ形に変わります。 一致する行の探し方も、MAC の付け替えも、そのままです。

補 2 の図

図の上半分が 1 台のルータの中の 2 つのテーブル、下半分が口ごとの割り当てと、それぞれの向こう側です。

VRF:ルータ 1 台の中に、ルーティングテーブルを複数持つ 「ルーティングテーブルは基本 1 台に 1 つ」の例外。同じ住所(192.168.10.0/24)を使う 2 つの組織を、1 台で混ぜずに扱える ルータ 1(箱は 1 つ) VRF「青」 テーブル(青) 192.168.10.0/24 → Gi0 10.0.0.0/8 → Gi1 VRF「橙」 テーブル(橙) 192.168.10.0/24 → Gi2 10.0.0.0/8 → Gi3 インターフェースごとに「どの VRF に属するか」を設定(手動) ip vrf forwarding 青 のように、口に色を付ける 青の口に来た通信は青のテーブルだけを見る。橙のテーブルは見えない Gi0 Gi1 Gi2 Gi3 A 社の PC 192.168.10.10 (青) B 社の PC 192.168.10.10(同じ番地) (橙) A 社の向こう側 10.0.0.0/8(青) B 社の向こう側 10.0.0.0/8(橙) 3 層で見ると もの:VRF(論理。ルータの中の「もう 1 つのテーブル」。VLAN がスイッチを論理的に分けたのと同じ発想を、ルータのテーブルでやる) 結びつき:インターフェース ⇄ VRF(手動)/VRF ごとのテーブルの行 ⇄ その VRF の口の IP(自動。図 1 と同じ) フロー:図 5 の ②「自分のテーブルを探す」が「自分の VRF のテーブルを探す」になる。他は同じ 勉強会の Fortigate の表示「Routing table for VRF=0」は、VRF を分けていないときの既定の 1 つ目。AWS の VPC も同じ発想(同じ番地を別の VPC で使える)

図 5 との接続

図 5 では、ルータ 1 とルータ 2 がそれぞれ 1 つのテーブルを持っていました。 テーブルが 1 つずつなので、別々の組織を別々のテーブルで扱うには、ルータを 2 台置くことになります。

VRF は、その 2 台ぶんの分かれ方を 1 台の中に持ち込みます。 分ける単位はインターフェースで、人が割り当てます。 番地が重なっていても混ざらないのは、経路を探す前に、どのテーブルを見るかが口で決まっているからです。

未検証・注意

  • 出典にした Cisco のドキュメントでは、この機能の呼び名は VRF-lite です。もともとは、プロバイダが番地の重なる複数の顧客網を支えるための機能として説明されています。図はそのうち、1 台の中でテーブルが分かれる部分だけを描いています。
  • 図の注にある「AWS の VPC も同じ発想」は、考え方が似ているという見立てで、両者の仕組みを突き合わせて確かめたものではありません。未検証です。
  • 勉強会の画面に出た「VRF=0」を、VRF を分けていないときの既定の 1 つ目と読みましたが、Fortigate の資料では確認していないので未検証です。
  • VRF どうしをつなぐ書き方(別の VRF に経路を渡す)は、この図には含まれません。

出典

  • 勉強会での本人の観察(2026-09-13 実機ハンズオン。資料は非公開)
  • Cisco: Configuring VRF-lite — 「VRF-lite is a feature that enables a service provider to support two or more VPNs, where IP addresses can be overlapped among the VPNs.」「VRF-lite uses input interfaces to distinguish routes for different VPNs」「a Layer 3 interface cannot belong to more than one VRF at any time.」

関連

この記事の校閲記録

誰が・いつ・どの版の・どの段落を・何の観点で見て、何と言ったかを全件そのまま出す(追記のみ・削除しない)。

段落 26 のうち出典つき 12・出典なし 14

v1 1 件
  • AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決

    VRF-lite が IP アドレスの重複を許すこと・入力インターフェースで経路を区別すること・1 つの L3 インターフェースが同時に複数の VRF に属せないことを Cisco の設定ガイドで確認した。図の注にある AWS の VPC との対応、および勉強会の画面に出た VRF=0 の読み方は、機器やサービスの資料で確認していないため未検証として本文に書いた。ルータの動きの言い方は、本人が確定した「自分のテーブルだけを見る」に合わせた。守秘: 実名・社名・会場名・地名・金額なし

参考文献

更新履歴

  • 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
  • 公開: 連載「ネットワーク基礎」の土台 11 本(入口・図 1〜7・補 1〜3)と目次

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