同じネットワークの中では、宛先 MAC が相手そのものを指す
図 1 の土台に PC-A から PC-B への通信を 1 本流し、空だった ARP テーブルと MAC アドレステーブルが、どのフローで何を覚えて育つのかを 5 つの番号で追う
目次
図 1 では、スイッチの MAC アドレステーブルも ARP テーブルも空のままでした。表は通信が流れてから育ちます。そこで、この 2 本目では 1 本だけ流します。
流すのは PC-A から PC-B へ、同じネットワークの中の通信です。同じネットワークとは、ルータを通さず直接届く範囲のことです。
この連載は、ネットワークの言葉をもの(物理と論理)、結びつき(手動、自動、固定)、通信フロー(1 本の通信がこれらを順に通る流れ)の 3 層に置いています。ここで動くのは、結びつきの層のうち自動の 2 つです。
登場するもの
新しい「もの」は増えません。箱もケーブルも図 1 と同じです。
動くのは 2 つの表です。MAC アドレステーブルは、MAC アドレスとその先の物理ポートの対応をスイッチが持つものです。ARP テーブルは、IP アドレスと MAC アドレスの対応を PC やルータが持つものです。どちらも論理で、自動で育ちます。
結びつき
IP アドレス ⇄ MAC アドレス(ARP)
PC-A は PC-B の IP アドレスを知っていても、MAC アドレスを知りません。届けるには相手の MAC アドレスが要ります。そこで全員あてで問い合わせます。ARP 要求はブロードキャスト、ARP 応答はユニキャストです。
要求を受け取った側も、その中に入っている送信元の IP アドレスと MAC アドレスを自分の表に書きます(RFC 826)。だから PC-B は返事のときに ARP を引き直しません。
MAC アドレス ⇄ 物理ポート
スイッチは、フレームが入ってきたその瞬間に、送信元 MAC アドレスと受信した物理ポートの対応を表に書きます。宛先 MAC アドレスが表に無ければ受信ポート以外の全ポートへ流し、有ればその物理ポートだけへ出します。
通信フロー
① PC-A が「192.168.10.20 の MAC は?」を全員あてに送ります。スイッチはこのとき MAC A がポート 1 の先だと覚えます。
② スイッチは受信ポート以外の全ポートへ流します。PC-B にも PC-D にも届きます。
③ PC-B だけが「私の MAC は B」と PC-A に返します。スイッチはこのとき MAC B がポート 2 の先だと覚えます。
④ ここまでで表に 2 行が育ちました。この番号では新しいフレームは流れず、① と ③ で覚えた 2 行を確認するだけです。
⑤ PC-A は PC-B の MAC アドレスを宛先にして送ります。スイッチは表を見て、ポート 2 だけへ出します。
スイッチは IP を見ていません。ただし送り出す PC-A は、相手が自分のネットワークの中かどうかを IP アドレスとサブネットマスクで判断してから ARP を出しています。
同じネットワークの中では、宛先 MAC アドレスが相手そのものを指します。IP アドレスと MAC アドレスが同じ相手を指している状態です。ルータをまたぐとこの一致が崩れますが、それは図 5 で見ます。
図 2
上が構成図で、番号のバッジが ①〜⑤ に対応します。下の帯は左が各表の推移(どのフローで行が増えたか)、右が通信の中身の推移(フローごとのフレームとパケット)です。
図 1・図 3 との接続
図 1 で空だった 2 つの表は、① と ③ で育ちました。ルーティングテーブルは動きません。この通信はルータを通っていないからです。
次の図 3 では、箱もケーブルもこのままで、PC-D だけを別の VLAN に置きます。変わるのは ② の流す範囲と ⑤ の探す範囲です。
未検証・注意
- ARP は IP パケットではありません。Ethernet の種類の欄が IP とは別の値です。図では中身が IP アドレスを扱うので同じ並びで描いていますが、ルータは ARP を中継しません。
- ARP テーブルの行にも寿命があり、時間が経つと引き直します。既定値は機種によって違い、確認していません。
- 勉強会の配布資料は非公開のため、設定値や画面は引用せず、一般化した構成で描いています。
出典
- 勉強会での本人の観察。2026-09-13 の実機ハンズオン(資料は非公開)
- インフラエキスパート: ARP — ARP 要求はブロードキャスト、ARP 応答はユニキャスト
- インフラエキスパート: Ethernet LAN - Layer2スイッチ — 送信元 MAC アドレスと受信ポートの記録、フラッディング、フィルタリング
- RFC 826: An Ethernet Address Resolution Protocol — 受け取った側が、パケットの中の送信元の対応を自分の表に書くこと
関連
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ネットワーク_INDEX — 連載の目次
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ネットワーク_00_3層で言葉を置く — 連載の入口と読む順番
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ネットワーク_01_土台の3層 — 流れる前の構成と各表
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ネットワーク_03_VLAN — 同じ構成のまま流す範囲を絞る
この記事の校閲記録
誰が・いつ・どの版の・どの段落を・何の観点で見て、何と言ったかを全件そのまま出す(追記のみ・削除しない)。
段落 32 のうち出典つき 12・出典なし 20
v1 1 件
AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決
出典 3 件を WebFetch で取得して確認した。ARP 要求はブロードキャスト・応答はユニキャストはインフラエキスパート、要求を受け取った側も送信元の対応を表に書くことは RFC 826 の Merge_flag の記述(sender protocol address が表にあれば更新する)で確認した。フローの番地とポート番号と学習の時点は、技術レビュー後の図(学習はフレームが入った瞬間)に本文を合わせた。ARP テーブルの寿命の既定値は出典を確認できず、未検証として本文に明記。守秘検査(人名、社名、会場名、地名、連絡先の機械検査)で該当なし
参考文献
- 二次インフラエキスパート: ARP参照 2026-09-14
- 二次インフラエキスパート: Ethernet LAN - Layer2スイッチ参照 2026-09-14
- 二次RFC 826: An Ethernet Address Resolution Protocol参照 2026-09-14
更新履歴
- 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
- 公開: 連載「ネットワーク基礎」の土台 11 本(入口・図 1〜7・補 1〜3)と目次
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