無線の通信が有線に現れる場所は、WLC 側か AP の有線インターフェースかで変わる
図 3 でアクセスポートに VLAN 番号を付けたのと同じことを、電波の名前である SSID に対してやる。AP が受けた通信が有線に現れる場所が 2 通りあることを 1 枚で追う
目次
図 3 では、物理ポートに VLAN 番号を人が付けました。その物理ポートが電波になると、同じことを電波の名前に対してやります。ここで見るのは、AP が受けた無線の通信がどこで有線に現れるかです。出口は 2 通りあります。
図 19 は 10/17 の勉強会の予習です。実機はまだ触っていないので、素材は公開されているドキュメントだけです。
この連載は、ネットワークの言葉をもの(物理と論理)、結びつき(手動、自動、固定)、通信フロー(1 本の通信がこれらを順に通る流れ)の 3 層に置いています。
登場するもの
AP(アクセスポイント)
電波を出す箱です。物理のものです。有線のインターフェースを 1 つ持ち、そこで有線につながります。
SSID
電波の名前です。論理のものです。1 台の AP が複数の SSID を出せます。
チャネル
周波数の区画です。論理のものです。2.4GHz ではチャネルの中心が 5MHz ずつずれ、1 チャネルの幅は 22MHz(11b)です。5 つ離せば 25MHz 空くので重ならず、重ならない組が 1、6、11 になります。
WLC(無線 LAN コントローラ)
AP をまとめて設定する箱です。物理のものです。SSID、チャネル、電波の強さを AP に配り、つながっている端末の表を持ちます。
CAPWAP のトンネル
AP と WLC の間の通り道です。論理のものです。制御用(UDP 5246)とデータ用(UDP 5247)の 2 本があります。
結びつき
SSID と VLAN の結びつきは手動です。集中型では WLC の動的インターフェース(WLAN を VLAN とサブネットに対応づける層 3 のインターフェース)に結びつけ、ローカルスイッチングでは AP の有線インターフェースで付けるタグ番号に結びつけます。
AP と WLC の結びつきは自動です。AP が WLC を探して参加を申し込み、参加できると設定を受け取ります。人が決めるのは AP のモードだけです。
AP の有線インターフェースをトランクにするかどうかも手動です。Local モードなら CAPWAP と AP 自身の通信しか通らないのでアクセスで足り、ローカルスイッチングをするならタグを付けるのでトランクにします。
通信フロー
① AP が起動すると WLC を探して参加します。制御用トンネル(UDP 5246、DTLS で暗号化)ができ、SSID、チャネル、電波の強さの設定を受け取ります。
② 端末 1 が SSID「社内」を選んで参加します。端末 1 のデータはまだ有線に出ていません。参加の手続きそのものは ① の制御用トンネルで WLC へ上がります。
③ 集中型では、AP は端末 1 の通信を CAPWAP のデータ用トンネル(UDP 5247)に入れ、WLC まで運びます。包まれた中には端末 1 の MAC アドレスも入っていますが、拠点のスイッチは外側の MAC アドレス(AP のもの)しか見ないので、端末の MAC アドレスは載りません。
④ WLC がトンネルから出し、SSID「社内」に結びつけた VLAN 3 のタグを付けて有線へ出します。端末 1 の通信が有線に現れるのは、この WLC の物理ポートが最初です。
⑤ ローカルスイッチングでは、SSID「来客」を AP が自分の有線インターフェースでタグ 20 を付けて出します。端末 2 の通信は拠点のスイッチにそのまま現れ、MAC アドレスも見えます。WLC へは制御だけが通ります。
AP のモードと出口の決まり方は別の話です。Local モードは全部の SSID の通信を CAPWAP で WLC へ運んで選べず、FlexConnect モードは SSID ごとに出口を選べます。
有線の形に直すのが誰かも、モードで変わります。IEEE 802.11 のフレームは有線の Ethernet フレームと形が違い、この図の AP は自分で直してから送ります(RFC 5415 §2 の Local MAC)。Local モードでは 802.11 のフレームのまま CAPWAP で運び、直すのは WLC です(同じく Split MAC)。RFC の Local MAC と Cisco の Local モードは別の語です。
電波の上の暗号は WPA2 が長く使われ、その後継の WPA3 は合言葉のやり取りを SAE という方式に置き換えています。
図 19
上が構成図とフローの矢印、その下にチャネルの重なりと AP のモードの箱が並びます。いちばん下は各表の推移と、通信の中身の推移です。
図 3 でアクセスポートに VLAN 番号を手で付けたのと同じことを、SSID に対してやります。同じ VLAN が全員あての届く範囲である、という決まりも、図 4 の「タグはトランクの区間だけ」も変わりません。
変わるのはタグを付ける場所で、WLC の物理ポートか AP の有線インターフェースかの 2 通りになります。図の ③ の区間にタグが付かないのは、AP の有線インターフェースで VLAN 10 をタグなしにしているからです。CAPWAP で包むこととタグの付け外しは別の話です。
CAPWAP の外側は普通の IP パケットなので、途中のルータは図 5 のとおり MAC アドレスを付け替えて運び、中身が無線の通信であることは知りません。ローカルスイッチングで出たタグ 20 の通信は、図 6 のとおりルータ 1 の Gi8.20 が受けます。
図 7 の 3 つの問題のうち、3 つ目はここでも残ります。CAPWAP のデータ用トンネルの暗号(DTLS)は OfficeExtend を除いて既定で無効なので、有線の区間では中身が読めます。
なお CAPWAP は LWAPP の後継で、古い資料に出てくる UDP 12222 と 12223 は LWAPP の番号です。
未検証・注意
- WLC への線が切れて standalone になったとき、ローカルスイッチングの SSID は動き続け、集中型の SSID は止まります。ただし出典には、ローカル認証を使うローカルスイッチングの SSID は connected でも standalone でも動くとも書かれています。切れた後に新しく参加する端末の扱いは認証をどちらでやるかで変わるため、扱っていません。
- Local モードの AP の電波が、WLC とつながっている間だけ動くかどうかは一次資料に当たれていません。
- IEEE 802.11 のフレームの MAC アドレスの欄がいくつあるかは確認していません。有線と形が違うことと、直すのが AP 側か WLC 側かは RFC 5415 §2 で確認しました。
- 分かりやすさのため無線の端末に VLAN 3 と VLAN 20 を使っていますが、無線用に専用の VLAN を分けるのが普通です。
- WLC の管理 IP アドレスと動的インターフェースを同じ網(192.168.3.0/24)にしています。Cisco は管理用と端末用を別の VLAN に分ける設計を示しており、ここでは簡略化しています。
- 11g は 1 チャネルの幅が 20MHz なので 1、5、9、13 も取れますが、同じ出典は 22MHz 間隔を励行しています。
- WPA2 と WPA3 は名前と役割だけで、どの方式が今どう非推奨かには踏み込んでいません。
- 設定コマンドは 1 つも書いていません。勉強会の資料もまだありません。外のサーバの 192.0.2.50 は説明用に予約された番地(RFC 5737)です。
出典
- Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, AP Connectivity to Controller — CAPWAP の UDP 5246 と 5247、データ側の DTLS が OfficeExtend を除いて既定で無効であること、AP の参加
- Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, Managing APs — AP のモード。Local は全 WLAN の通信を CAPWAP で運び、FlexConnect は WLAN の設定によって出口が変わる
- Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, FlexConnect — 拠点向けであること、locally switched と centrally switched、802.1Q のトランクとタグ、connected と standalone、往復 300 ミリ秒以下
- Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, Ports and Interfaces — 動的インターフェースの定義、コントローラの口が 802.1Q トランクであること
- RFC 5415 CAPWAP Protocol Specification — §2 の Local MAC と Split MAC。有線の形に直すのが AP 側か WLC 側か
- インフラエキスパート: 無線LAN - チャネル — 2.4GHz のチャネル間隔 5MHz、11b の幅 22MHz、重ならない組 1/6/11、11a の利用できるチャネル
- インフラエキスパート: 無線LAN - CAPWAP — CAPWAP が LWAPP の後継であること
- Wi-Fi Alliance introduces Wi-Fi CERTIFIED WPA3 security — WPA3 が WPA2 の後継で、個人向けは SAE を使うこと(2018-06-25)
関連
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ネットワーク_INDEX — 連載の目次
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連載の入口: ネットワーク_00_3層で言葉を置く(
/notes/nw-basics-00-three-layers) -
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/notes/nw-basics-18-mab-radius) -
次の記事(図 20): ネットワーク_20_IPv6(
/notes/nw-basics-20-ipv6) -
VLAN 番号を物理ポートに付ける形: ネットワーク_03_VLAN(
/notes/nw-basics-03-vlan) -
タグが付く区間の決まり: ネットワーク_04_トランクとタグ(
/notes/nw-basics-04-trunk) -
ここでも残る 3 つ目の問題: ネットワーク_07_インターネットを挟む(
/notes/nw-basics-07-internet)
この記事の校閲記録
誰が・いつ・どの版の・どの段落を・何の観点で見て、何と言ったかを全件そのまま出す(追記のみ・削除しない)。
段落 41 のうち出典つき 14・出典なし 27
v1 2 件
AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決
出典 8 件を WebFetch で取得して確認した。CAPWAP の UDP 5246(制御)と 5247(データ)、データ側の DTLS が OfficeExtend を除いて既定で無効であることは Cisco の 8.10 構成ガイドで確認した。Local モードが全 WLAN の通信を CAPWAP で運ぶこと、FlexConnect が WLAN の設定によって出口を選ぶことは同ガイドの Managing APs で確認した。FlexConnect が拠点向けであること、locally switched と centrally switched、802.1Q のトランクとタグ、connected と standalone、往復 300 ミリ秒以下は同ガイドの FlexConnect で確認した。動的インターフェースが WLAN を VLAN とサブネットに対応づける層 3 のインターフェースであること、コントローラの口が 802.1Q トランクであることは同ガイドの Ports and Interfaces で確認した。有線の形に直すのが AP 側か WLC 側かは RFC 5415 §2 の Local MAC と Split MAC の記述で確認した。2.4GHz のチャネル間隔 5MHz と 11b の幅 22MHz、重ならない組 1/6/11、11a の最大 19 チャネルはインフラエキスパートで確認した。CAPWAP が LWAPP の後継であることも同サイトで確認した。WPA3 が WPA2 の後継で SAE を使うことは Wi-Fi Alliance の 2018-06-25 の発表で確認した。この記事は 10/17 の勉強会の予習で、実機の観察は含まない。standalone になった後の新規の端末、Local モードの電波の扱い、IEEE 802.11 のフレームの MAC の欄の数は未検証として本文に明記した。校正チェックリストを全項目回し、図の『口』を本文では物理ポートとインターフェースに書き分け、ポート番号は UDP の番号にだけ使った。守秘検査(人名、社名、会場名、地名、連絡先の機械検査)で該当なし
AIAI (claude-fable-5) が 編集未解決
公開前の校閲。「この 19 本目」を「図 19」に直した。関連を、図 8〜16 と同じ形に揃え、前の記事(図 18)と次の記事(図 20)への行と /notes/ のパスを足した。外のサーバが 192.0.2.50 であること、VLAN 3 と VLAN 20 の使い分け、Local MAC と Cisco の Local モードの書き分けは図と担当メモに一致していたので、修正していない。
参考文献
- 二次Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, AP Connectivity to Controller参照 2026-09-14
- 二次Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, Managing APs参照 2026-09-14
- 二次Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, FlexConnect参照 2026-09-14
- 二次Cisco Wireless Controller Configuration Guide 8.10, Ports and Interfaces参照 2026-09-14
- 二次RFC 5415 CAPWAP Protocol Specification参照 2026-09-14
- 二次インフラエキスパート: 無線LAN - チャネル参照 2026-09-14
- 二次インフラエキスパート: 無線LAN - CAPWAP参照 2026-09-14
- 二次Wi-Fi Alliance introduces Wi-Fi CERTIFIED WPA3 security参照 2026-09-14
更新履歴
- 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
- 公開: 連載「ネットワーク基礎」図 8〜24 の記事 17 本と目次の更新
機械可読の記録
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