2 本の線を、1 つのポートに見せる
スイッチ 2 台の間の物理ポート 2 本を論理ポート Po1 に束ねると、STP から 1 本に見えて輪にならない。束ね方と振り分け方、1 本切れたときを 1 枚の図で見る
目次
図 14 の STP は、輪ができたら口を 1 か所止める道具でした。 EtherChannel は同じ「壊れても止まらない」の塊の続きで、そもそも輪にしない道具です。 線は 2 本のまま、スイッチには 1 本に見せます。 前提は図 14 の続きで、スイッチ 1 が根(ルートブリッジ)です。ただし 2 台の間の線は 1 Gb/s を 2 本にしてあります。
この連載は、ネットワークの言葉を 3 つの層に置いて読みます。 もの(物理か論理か)、結びつき(人が設定で付ける手動か、機器が学習する自動か、製造時に決まる固定か)、通信フロー(1 本の通信がそれらを順に通る道筋)の 3 つです。
登場するもの
物理ポート
差込口そのものです。ここでは Gi0/1 と Gi0/2 にケーブルが 2 本刺さっています。
論理ポート Po1
論理のもので、設定で作る「1 つに見える口」です。 スイッチの設定にも STP にも MAC アドレステーブルにも、この Po1 が 1 つのポートとして出てきます。
モード
論理・手動です。 LACP なら active と passive、PAgP なら desirable と auto があります。 片側は自分から確かめ合いを始める側(active か desirable)でないと、束ねる話が始まりません。
結びつき
- 物理ポート ⇄ Po1 は手動です。両側の物理ポートに、チャネル番号とモードを設定します。
- ただし設定しただけでは入りません。LACP や PAgP のフレームを出し合って合意できた物理ポートだけが、自動で Po1 に入ります。
- フレーム ⇄ どの物理ポートから出すかは自動です。宛先や送信元のアドレスから計算した値で 1 本を選びます。
通信フロー
① 束ねたい物理ポートに、チャネル番号とモードを設定します。片側だけに設定しても束ねられません。
② 設定した物理ポートから LACP のフレームを出し合い、束ねてよいかを確かめ合います。両側とも受け身のモードだと、確かめ合いが始まりません。
③ 合意できた物理ポートが束ねられ、Po1 が up になります。STP は Po1 を 1 つのポートとして扱うので、この 2 本については輪にならず、どちらもブロックされません。
④ フレームを送るとき、アドレスから計算した値で束ねた中の 1 本を選びます。同じ組合せは毎回同じ線を通ります。
⑤ 1 本が切れると、その物理ポートが Po1 から外れます。Po1 自体は残るので、通信は残りの線へ移ります。
束ねる前は、STP が根から遠い側の 1 つをブロックしていました。束ねた後は、そのブロックが要りません。
図 15
図の上半分が束ねる前と後の形、中ほどが振り分けとモードの組合せ、下半分が各表示の推移と通信の中身の推移です。
図 4 のトランクの区間が、そのまま Po1 の上に乗ります。 通信の中身(宛先 MAC・送信元 MAC・タグ・IP)は図 4 と 1 つも変わりません。変わるのは、束ねた 2 本のどちらの物理ポートから出すかだけです。
図 14 で「輪ができたので片方を止める」と書いた状況は、この 2 本については起きなくなります。
次の図 16 では、止まらないようにする対象が、スイッチ同士の線からデフォルトゲートウェイに移ります。
未検証・注意
- 「輪にならない」のは、束ねた 2 本についての話です。別の経路でできる輪は、引き続き STP が切ります。
- 帯域の表示が足し算になることは勉強会の画面で見た事実で、一次資料は確認していません。1 つの通信は 1 本の線しか使わないので、1 つのファイル転送が 2 倍速くなるとは限りません。合計が増えるのは、同時に複数の通信があるときです。
- 振り分けの材料(送信元 MAC だけを使う、送信元と宛先の IP を使う、など)は機種と設定によります。
- 1 本外れたときに STP の再計算が起きるかどうかは、一次資料を見つけられませんでした(未検証)。束の帯域が変われば経路のコストも変わりえます。
- MAC アドレステーブルの出口が Po1 になることは、勉強会では確認していません(未検証)。
- 1 本抜いたときの切替の速さ(連続 ping が 1〜2 発落ちる程度)は機器と設定によるので、秒数は書いていません。
- チャネル番号を両側で同じにする必要があるかどうかは、一次資料で確認していないため書いていません。
- Cisco の文書は LACP を IEEE 802.3ad の規格として書いています。現行のリンクアグリゲーションの規格は IEEE 802.1AX-2020 です。図には IEEE GET Program で無償入手できると書いていますが、今回 IEEE のページを取り直したところ、802.1AX-2020 の項にその一文を見つけられませんでした(GET Program での入手経路のリンクはあります)。無償かどうかと、802.3ad から移った経緯は未検証です。
出典
- 勉強会での本人の観察(2026-09-13 実機ハンズオン。資料は非公開)
- Cisco: EtherChannel Configuration Guide — A port in the passive mode cannot form an EtherChannel with another port that is also in the passive mode because neither port starts LACP negotiation/LACP は 16 ポートまで登録し 8 本が現用・8 本が待機、PAgP は 8 まで/PAgP is a Cisco-proprietary protocol/LACP is a network protocol defined under the IEEE 802.3ad standard/PAgP adds the group to the spanning tree as a single device port/Configure all ports in an EtherChannel to operate at the same speeds and duplex modes
- Cisco: Understand EtherChannel Load Balance and Redundancy on Catalyst Switches — The algorithm is deterministic; if you use the same addresses and session information, you always hash to the same port in the channel
- IEEE 802.1AX-2020: IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks — Link Aggregation — 現行のリンクアグリゲーションの規格(2020 年)
関連
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ネットワーク_INDEX — 連載の目次
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連載の入口: ネットワーク_00_3層で言葉を置く(
/notes/nw-basics-00-three-layers) -
Po1 の上に乗るトランク: ネットワーク_04_トランクとタグ(
/notes/nw-basics-04-trunk) -
前の記事(図 14): ネットワーク_14_STP(
/notes/nw-basics-14-stp) -
次の記事(図 16): ネットワーク_16_VRRP(
/notes/nw-basics-16-vrrp)
この記事の校閲記録
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段落 30 のうち出典つき 12・出典なし 18
v1 1 件
AIAI (claude-fable-5) が AI 確認未解決
出典 URL 3 本を再取得した。受け身のモード同士が組めないこと(neither port starts LACP negotiation)、LACP は 16 ポートまで登録して 8 本が現用・8 本が待機、PAgP は Cisco-proprietary、LACP は IEEE 802.3ad、PAgP adds the group to the spanning tree as a single device port、速度とデュプレックスをそろえることを Cisco の EtherChannel 設定ガイドで、振り分けが deterministic であることを Load Balance のページで確認した。IEEE 802.1AX-2020 のページは到達できたが、802.1AX-2020 の項に「無償で入手できる」旨の一文を見つけられなかったため、無償かどうかを未検証として本文に書いた。帯域の足し算の表示・MAC アドレステーブルの出口が Po1 になること・1 本外れたときの STP 再計算は、一次資料が無いため未検証として残した。校正チェックリストを通し、例え話・体言止め・結論の先取りを検査した。守秘: 実名・社名・会場名・地名・金額なし
参考文献
更新履歴
- 連載のトピックを「ネットワーク基礎」から「ネットワーク」へ改名(32 本+目次。slug と URL は不変)
- 公開: 連載「ネットワーク基礎」図 8〜24 の記事 17 本と目次の更新
機械可読の記録
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